2018年10月23日火曜日

「C-BTEマニフェスト」:基本理解30


C-BTEのパラダイム:アンテオケ声明書:C-BTEマニフェスト」:基本理解30

C-BTEChurch Based Theological Education)の「基本理解30」はアンテオケモデルの30の主要な考え方、すなわち、教会がどのようにして自然発生的に増え広がって行ったかについて「使徒の働き」が示している聖書のモデルに基づくものである。

基本理解1: 「パウロのサイクル」
教会の働きの基本は、大局的に見て望ましい町々に福音を宣べ伝え、教会を建て上げ、その教会を健全に訓練された指導者に委任していくことである。

基本理解2: 「建て上げ」
福音(パウロの「初期の手紙」)に建て上げられ、教会に委ねられた働き(パウロの「中期の手紙」)を実証し、神の家族として成熟(パウロの「後期の手紙」)していく健全な教会を建て上げる過程である。

基本理解3: 「信仰の人に委ねる」
牧師は「主の宣教大命令」という観点から「健全な教え」に教会の監督責任を委ねていける指導者の恒久的で世代間の連鎖を生み出すような、次世代指導者の育成を真剣に考える必要がある

基本理解4: 教え:ケリグマとディダケー
初期の教会がケリグマ(福音の物語)ディダケー(教え)と呼び、すべての信者が聖書の「基本原則」から注意深く建て上げられていく必要のある教えの中心、すなわち、キリストの教えの本質であり、書簡(手紙)そして最終的には「福音書」という形でキリストの使徒たちを通して教会に伝えられたものである。

基本理解5: アンテオケの伝統
「キリストとその使徒たちの手法」に則った初代教会の主要な三つの伝統の中の一つで、21世紀に全世界規模でこの伝統に戻るためのモデルとなるものである。

基本理解6: 神学教育
神学とは教会を生み出し、牧会していくために十分に整えられた牧会指導者たちを育てる作業である。と同時に性別職業年齢に関係なくすべての信者が「聖書的に考える能力を高める」ための生涯にわたる作業である。

基本理解7: 教会主体の神学教育C-BTEChurch Based Theological Education
第一義的には信仰の「基本原則」に始まる「健全な教え」を保つために必要な働きと理解される。その地区教会での生活と教会の使命と働きに深く根ざし、成長を目指す指導者と成熟を目指す信者を育て上げるために作られ本格的に秩序立てられた学びである。

基本理解8: 神学体系
西洋の組織神学ではなく聖書神学に基づき、今までのものを払拭し「使徒の教え」と「文化の中で神学する」という手法に完全に再編する必要のある古くて新しい規範(1)福音を宣べ伝える者は何を学ぶべきか(2)どのような順序で学ぶべきか、の二つを問う。

基本理解9: キリスト者教育Ⅰ:子供
地区教会共同体の中で行われる、両親の指導の下、子供たちを信仰に建て上げ、それぞれに与えられているその子ならではのライフワークと生涯にわたる学びを始められるよう企画された、本格的に秩序立てられた学びである。

基本理解10: キリスト者教育Ⅱ:成人
地区教会建て上げの中で行われる、成人したクリスチャンを信仰に建て上げ、信仰とその人自身のライフワークを完全に一致させて「際立って、顕著な、他とは異なる、普通とは違った」人生を全うできる者となるよう企画された本格的に秩序立てられた学びである。

基本理解11: 評価と認証
初代教会共同体の中で行われていた牧会と実務を行う上で人格的にも働きの面でも適格性を持ち、なおかつ今の文化の流れに即した指導者を見分け、認証していく取り組みである。

基本理解12: アンテオケ教会の伝統:教会専属神学者、教会主体の神学会議
初代教会のようなアンテオケ教会、教会専属神学者、教会会議に戻す。歴史上またとないこの時をしっかり捉え、現代西洋のパラダイムである専門職としての牧師、神学者、宣教師、神学教育機関から「脱構築」し、聖書の意図に基づいて再構築する。

基本理解13: パウロのチームとアンテオケ教会ネットワーク
パウロの宣教牧会チームとアンテオケ教会ネットワークは、全体的戦略と世代別戦略をバランスよく保ちつつ、活力ある教会運動を生み出し広げていくための中枢である。

基本理解14: 自然発生的広がり
ローマ帝国全体に自然発生的に広がった教会は人間の緻密な計画によらず、聖霊の間接的、時には直接的な指示の下、宣教の門戸を開けようと応答した使徒的指導者たちの戦略的意図によったものである。

基本理解15: 文化の中での神学 
教会の指導者や信者たちが聖書神学という規範に支えられ、生き生きとした共同体を作りながら再創造の御業として文化芸術を生み出し、真の意味で色々な必要に応える者として生活をする中で社会の価値観に影響を与える教会活動である。

基本理解16: 救済と開発・発展
危機的な状況にある地域の教会を支えている世界中の教会ネットワークがまず世界規模で必要な救済と開発・発展へ寄与しなければならない。そうすることで教会は、様々なクリスチャンNGOにこの働きを単に委託せずに、これら危機的な状況にある地域の救済と開発・発展のために、もっと幅広い社会生活基盤整備ができ、一つの共同体となれるものである。

基本理解17: 世界規模での宣教戦略
ローマ全域にユダヤ部族が離散し、ローマが世界都市となって行く状況の中で起こる文明の衝突を通して世界の秩序を作り変えるという、時世をわきまえた「パウロ的」福音宣教を実践、実現することによって福音を21世紀の世界に広めようという戦略計画である。

基本理解18: 西への戦略‐アンテオケ構想
西洋のキリスト教界が衰退し、ポストモダン的発想に立った脱キリスト教文化が台頭してきているという現実のただ中にあって、西洋諸国、その影響下にある国々はキリストと使徒の土台に根ざした新たな教会建て上げ構想、すなわち、アンテオケの伝統に根ざした宣教構想が必要である。  

基本理解19: 伝道所、教会、地域ネットワーク作り
教会は、文化としての民族の特殊性を保ちつつも注視している地域社会にキリストにあって一つ心であることを示していくようパウロの宣教チームと地区ごとの牧師のネットワークの下でケリグマとディダケーをよく理解して建て上げられていく必要がある。

基本理解20: 堅固に建て上げられ、貢献者として仕える家族
地域教会の地域への影響力の中心は、経済界、商業界、教育現場、自宅周辺地域、社会奉仕といった、その地域社会で貢献する、できる者として仕えるしっかりと建て上げられた家族である。

基本理解21: 個人の成熟‐教育・ライフワーク
地域に福音の影響力を広めていくための教会建て上げ戦略にとって主要なのは、一人一人がキリストにあって成熟し、明確な自分自身のライフワークを展開し、生涯をかけて知恵に基づく生き方を深めていけるよう助けていくことである。

基本理解22: 町の繁栄を求め、寄与・貢献する
教会が地域レベルで宣教を推進していく時の一番の関心事であり、確かな仕事をし、地域に奉仕する生き方を実践し、緊急の必要が生じた時に応えることで、教会が建てられている地域での貢献者共同体となることを求めていくことである。

基本理解23: リソースセンターとしての神学校改革
神学校はリソースセンターとして改革される必要がある。神学校は教会を主体とした神学教育を全国、世界規模で繰り広げていくという目的のためにその財産や人材を再配置し、実質的な神学教育ネットワークとなる。

基本理解24: 宣教団のネットワークとしての再構築
C-BTEパラダイムに基づく宣教団のあり方をネットワークとして再構築し、必要不可欠な宣教師をパウロのチームに再配置して教会を建て上げる働きをするアンテオケ教会に遣わし、働きを加速させる。

基本理解25: 地球規模の隣人から隣人への宣教、開拓を推進する神学に熟達する
一例として地球規模のペンテコスト主義は20世紀、21世紀の驚異であり、南半球への福音の広がりの主な原動力となっている。その中で教会建て上げが行われ、教会が神学に熟達し、実を育て、自分たちの文化全体への影響を確実なものとしていることを真剣に受け止めなければならない。

基本理解26: パラチャーチ組織-真に教会に根ざした伝道事業への再構成
パラチャーチ組織そのものを「ソダリティー・モダリティー」という考え方を持ち、パウロの宣教チームと教会ネットワークを正しく推奨する手段として真に教会主体の伝道事業に再構成する必要がある。

基本理解27: 救済と開発発展のための組織-教会活動への融合
救済と開発発展のための組織は教会活動に融合される必要がある。計画ごとに「ソダリティー(教派教団の縦型組織)・モダリティー(教派を超えた広域組織」」という考え方を持って成熟したパウロの宣教チームが教会ネットワークに資力と人材を配置し直す。

基本理解28: 各教派の伝統を再考し、改めて聖書に戻って教会建て上げ活動を目的とした再構築を志向する。  
プロテスタント各派は今までの伝統を再度、聖書に戻って再考し、改め、今の宗派の根拠となっている「宗派の伝統」ではなく「キリストとその弟子たちの手法」という初代教会のDNAを持って教会を建て上げる活動へと目的を改める必要がある。そうすることで主流派(高教会派)の伝統を持つか、福音派の伝統を持つか、ペンテコスト派の伝統を持つかといった今の肥大化した分け方にあてはめようとせずに南半球で起こっている「新しいキリスト教世界」の誕生を促進する。

基本理解29: 基盤-企業モデルではなく、いのちの交わり「教会家族共同体」
クリスチャン財団のあり方を教会家族財団へと再編する。財団の目的は教会主体の伝道計画を支えることであると同時に「パウロの宣教チーム」の一員となるように再構築する。また「企業モデル」ではなく霊の監督たちから成る均衡ある経営体制のあり方へと理解を深める。

基本理解30: 出版事業の再構築:共同経営者であり、教会ネットワークと教会を主体とした伝道事業のための出版  
書物の出版(本以外の媒体事業も同様)は教会ネットワークと教会主体の伝道事業のために行い、福音主義出版界の「市場販売戦略の加熱」から脱却し、出版業も基本的には教会ネットワークの一つであると考える。

2018年10月6日土曜日

聖書に戻って再考する聖書の意図

聖書に戻って再考することなくしてパラダイム転換の必要性を実感することはありませんし、ましてや「C-BTEパラダイム」の確かさを実感することも困難です。なぜなら、私たちはすでに2000年の歴史の中で聖書の意図とは異なるパラダイムに基づいて聖書を読み、考えキリスト信仰を形作っているからです。それが完全否定されるものではないもの、それがゆえに聖書の意図に基づいた神の家族教会共同体を建て上げていないとしたら真剣に再考すべきです。そのために啓示の書である聖書、つまり使徒時代、その初代教会に、そしてそれに続く使徒後時代に戻って再考してみることです。啓示の書、聖書に基づいて考えない限り真の意味でのパラダイム転換は実現しないからです。

 使徒時代、主の宣教大命令に応え、逡巡しながらもエルサレムからローマへと宣教が展開していきました。文字通り地理的な広がり、信じる信者の数を増していきました。そして生まれた教会に送られた書簡を見ると、教会が様々な問題を直面するごとに、使徒たちに教えられ、訓戒、励まされながら質的にも成長していった様子を読み取れます。新たに召された使徒パウロの存在とその働き、そのパウロに示された奥義としての教会は啓示の圧巻として注目させられます。

ところが意外な反応が帰って来ます。「あのパウロの宣教によって生まれた教会はどうなったのか、とりわけ小アジアの拠点であったエペソ教会とそのネットワークの諸教会は皆無だ、世界宣教の拠点になったシリアのアンテオケ教会も今はない」、「改めて聖書に戻って再考する意味、意義はどれほどあるのか」と。

 時代の変化と共に教会の変化(いわゆる「パラダイム」の変化)に注目すべきです。聖書時代、それに続く使徒後時代の教会は息つく暇なく迫害が続いたわけではありませんが、決して居心地の良い環境ではありませんでした。むしろキリスト者であるがゆえに排斥され、時には迫害を受け、命の危険にさらされていました。キリスト教会は当時のローマ帝国の公認宗教団体でもなかったのです。しかし、キリストの神の家族共同体から次の新しい共同体へと次々と広がっていったことは事実です。そしてローマ帝国が二分三分する中でコンスタンティヌス大帝がローマ帝国の再興に力を発揮しました。そして313年、コンスタンティヌス大帝はキリスト教会を公認し、保護するようになりました。それはキリスト教会の真の意味での勝利というものではありません。むしろキリスト教会に託された奥義が変質していく岐路でもあったのです。聖書の意図とは次元の異なるパラダイムへと移行していったのです。キリストの救いが何であるのか、救われた者がどのような人生を建て上げていくのか、信仰のもっとも大切な「使徒たちの教え」の部分が省略されていきます。そして典礼中心の信仰生活へと変質していきます。世俗的なキリスト信仰に対する反動として禁欲を美徳とする修道院、もっともこの時点では共同体というより個人的でしたが、この頃から生まれています。

さらに380年代には公認宗教から国教化され、制度的安定、見た目の安定がありますが、霊的、質的には大きく後退です。そして100200年、300年と続き、「中世カトリシズム」が体系化されていきます。そして起源600年代にイスラムの出現が東方教会を拡散させ、弱体化しています。その後、十字軍の派遣で多少盛り返すも、15世紀にオスマン帝国時代に東方教会の中心都市コンスタンチノープルはイスラムの重要な拠点としてイスタンブールとなりました。東方から西方に移った教会が中世カトリシズム、ヨーロッパキリスト教世界を作り上げていきます。この延長線上に16世宗教改革が起こります。その一人マルチン・ルターは救いの確かさを求めて中世カトリシズムのパラダイムに徹して追求し続けます。その最良の道が修道士になることでした。が、しかし、ますます不安と絶望感に陥ります。そうした中で聖書に向き合うように指導され、聖書の意図を再考する中で初めて信仰の何であるかを確信したのです。こうして宗教改革の二大原理、「信仰のみ、聖書のみ」が確立していきました。

「聖書はすべて、神の霊感によるもので、教えと戒めと矯正と義の訓練とのために有益です。それは、神の人が、すべての良い働きのためにふさわしい十分に整えられた者となるためです」(Ⅱテモテ3:16-17)

聖書(旧約聖書)の意図を明らかにしたイエス・キリストの教え、もう一人の助け主、聖霊によって主イエス様の意図を明らかにされた使徒たちの教え、健全な教え、キリストによる基本原則が健全なクリスチャン人生を建て上げ、神の家族共同体、主の教会を建て上げることになるのです。教会も聖霊によって主イエスが啓示された神の奥義です。それ以外の教え、議論は「信仰による神の救いのご計画の実現をもたらすものではありません」(Ⅰテモテ1:4)でした。

「それには何よりも次のことを知っていなければいけません。すなわち、聖書の預言はみな、人の私的解釈を施してはならない、ということです。なぜなら、預言は決して人間の意志によってもたらされたのではなく、聖霊に動かされた人たちが、神からのことばを語ったのだからです」(Ⅱペテロ1:20-21)。
今、必要なことは聖書の意図に添った聖書の原則に基づく聖書の解釈です。