2020年6月26日金曜日

解説:基本理解12:「アンテオケ教会の伝統:教会専属神学者、教会主体の神学会議」


基本理解12:「アンテオケ教会の伝統:教会専属神学者、教会主体の神学会議」

初代教会のようなアンテオケ教会、教会専属神学者、教会会議に戻す。歴史上またとないこの時をしっかり捉え、近代西洋のパラダイムである専門職としての牧師、神学者、宣教師、神学教育機関から「脱構築」し、聖書の意図に基づいて再構築する。

 

解説:この基本理解は文字通り「パラダイム転換」の実際的な取り組みと言えます。教会の指導者、教職者と言われる牧師、宣教師等は一般的にそれぞれの神学校で研修し、教会に就任したり、宣教師への召しがあれば特定の宣教団に所属して宣教地に派遣されます。この研修のあり方を先に取り上げた初代教会の中核的存在であった「アンテオケ教会」の伝統に基づいて再構築することです。

なぜ、そうしなければならないのか、現在の神学校における神学教育の大半は近代西洋のパラダイムに基づくものです。その中核要素となっているのは以下の四部門構成です。

Ⅰ、聖書学 :聖書概観、聖書入門等々、

Ⅱ、神 学 :組織神学、すなわち神論、キリスト論、救済論、終末論等々、

Ⅲ、歴史神学:教会史、キリスト教思想史等々、

Ⅳ、実践神学:宣教論、クリスチャン教育、カウンセリング、説教等々、

この四部門構成はシュライエルマッハー(17681834)の四層の「神学的学術大系」を土台としています。その特性は神学の勉強を学問のカテゴリー(範疇)、分類、認識等の根本的な枠組みにおいて構成されていることです。したがって組織神学は純粋な思考(論理)によって真理の認識に到達しようとする学問だけに思弁的に陥りやすい。真の神学者はその特性を認識し、いのちの交わりである教会生活、日々の祈りのうちに日常的に聖書に親しむことを前提に組織神学の学びをするよう注意喚起しています。

欧米の伝統的な神学校、聖書大学、またTEEのプログラム等はこの「神学的学術大系」を基本としています。またTEE1970年代にラテン・アメリカで生まれたもので神学校のカリキュラムに沿って指導者を育てる、教会の一室を教室として行う神学校の延長プログラムと言えます。

このようなアカデミック、学究的な教育の反動として起こったのがいわゆる「弟子訓練」プログラム、スモールグループ活動等があります。その中核的要素は「個人々のクリスチャン生活」、「個人の訓練」すわち聖書研究や祈り、ティボーション等の指導があり、さらに証し、個人伝道等のプログラムがあります。弟子訓練の資料はきわめて個人中心であり、パラチャーチ組織で作られたものが大部分です。多くの場合、地域教会での神の家族共同体生活に関する注意深い理解を欠いている場合が多いと言われています。

C-BTEは近代西洋のパラダイムに基づく神学教育の核心的な問題意識を持っていのちの交わりとしての教会主導の教育と訓練への転換であり、全く新しいシステム「キリストとその弟子たちの手法」によるものです。「牧師は何を学ぶべきか」、そして「牧師はそれをどんな順序で学ぶべきか」について聖書の意図を注意深く確認しています。

 奥義としての教会について開示されたパウロがテモテを訓練した方法、新約聖書の教会における手法に注目したい。特に牧会書簡で明らかにされている型を注意深く学ぶことです。テモテへの手紙第二は聖書神学の実例です。とりわけ「委ねられたものを渡す」に注目すると、そこに意図されている二つの中核概念が確認できます。

1)パウロがテモテを訓練した実例は永続的な型である (Ⅱテモテ22節:多くの証人の前で私から聞いたことを、他の人にも教える力のある忠実な人たちにゆだねなさい)

2)パウロがテモテへの訓練を振り返っている内容は現代のモデルを作るうえで枠組みとなる (Ⅱテモテへの手紙)

 

パウロがテモテを訓練した内容:「託されたものを委ねる」

Ⅰ、〈テモテがすべき事柄〉

1) いのちの共同体神の家族「教会」の中で神にふさわしい生きた方、人格を確立する。

①Ⅰテモテ 4:16:自分自身にも、教える事にも、よく気をつけなさい。あくまでそれを続けなさい。そうすれば、自分自身をも、またあなたの教えを聞く人たちをも救うことになります。

②Ⅰテモテ 4:12:年が若いからといって、だれにも軽く見られないようにしなさい。かえって、ことばにも、態度にも、愛にも、信仰にも、純潔にも信者の模範になりなさい

③Ⅱテモテ 1:6:それですから、私はあなたに注意したいのです。私の按手をもってあなたのうちに与えられた神の賜物を、再び燃え立たせてください。

④Ⅰテモテ 4:7,8:俗悪で愚にもつかぬ空想話を避けなさい。むしろ、敬虔のために自分を鍛練しなさい。肉体の鍛練もいくらかは有益ですが、今のいのちと未来のいのちが約束されている敬虔は、すべてに有益です。 

2) 主の宣教大命令に応え、いのちの共同体においてミニストリー(牧会、伝道)を実践しながら、ミニストリーの技術を学ぶ。

①Ⅱテモテ 4:5:しかし、あなたは、どのような場合にも慎み、困難に耐え、伝道者として働き、自分の務めを十分に果たしなさい

②Ⅱテモテ 4:2みことばを宣べ伝えなさい。時が良くても悪くてもしっかりやりなさい。寛容を尽くし、絶えず教えながら、責め、戒め、また勧めなさい。

③Ⅱテモテ 4:2:みことばを宣べ伝えなさい。時が良くても悪くてもしっかりやりなさい。寛容を尽くし、絶えず教えながら、責め、戒め、また勧めなさい。

④Ⅰテモテ 6:2:信者である主人を持つ人は、主人が兄弟だからといって軽く見ず、むしろ、ますますよく仕えなさい。なぜなら、その良い奉仕から益を受けるのは信者であり、愛されている人だからです。あなたは、これらのことを教え、また勧めなさい。

⑤テトス 1:5:私があなたをクレテに残したのは、あなたが残っている仕事の整理をし、また、私が指図したように、町ごとに長老たちを任命するためでした。 

3) 「健全な教え」を委ねられるように取り組み、学問的にも確かな教えを継承する。

①Ⅰテモテ 4:1:しかし、御霊が明らかに言われるように、後の時代になると、ある人たちは惑わす霊と悪霊の教えとに心を奪われ、信仰から離れるようになります。

②Ⅱテモテ 1:13:あなたは、キリスト・イエスにある信仰と愛をもって、私から聞いた健全なことばを手本にしなさい

③Ⅱテモテ 2:152:15 あなたは熟練した者、すなわち、真理のみことばをまっすぐに説き明かす、恥じることのない働き人として、自分を神にささげるよう、努め励みなさい。

 

Ⅱ、〈訓練の状況〉

①Ⅱテモテ 3:10-11: しかし、あなたは、私の教え、行動、計画、信仰、寛容、愛、忍耐に、またアンテオケ、イコニオム、ルステラで私にふりかかった迫害や苦難にも、よくついて来てくれました。何というひどい迫害に私は耐えて来たことでしょう。しかし、主はいっさいのことから私を救い出してくださいました。

②Ⅱテモテ 2:2多くの証人の前で私から聞いたことを、他の人にも教える力のある忠実な人たちにゆだねなさい。

③Ⅱテモテ 1:14:そして、あなたにゆだねられた良いものを、私たちのうちに宿る聖霊によって、守りなさい

④Ⅱテモテ 2:2多くの証人の前で私から聞いたことを、他の人にも教える力のある忠実な人たちにゆだねなさい

⑤Ⅱテモテ 4:54:5 しかし、あなたは、どのようなばあいにも慎み、困難に耐え、伝道者として働き、自分の務めを十分に果たしなさい

⑥使徒の働き16:2ルステラとイコニオムとの兄弟たちの間で評判の良い人であった

 

C-BTEカリキュラム構成:文化との関わりで「神学する」ことを目指す

Ⅰ、釈義の技術

「神のことば」を解釈する:教えること、説教すること

Ⅱ、聖書神学

1. 神学技能::それぞれの文化の中で「神学する」ことを目指して

2. 人生とミニストリーに備える

Ⅲ、文化の中で「神学する」

1. コースの策定

2. 教会の直面する諸課題を解決する

3. ミニストリー(宣教・牧会戦略)を作る 

このような視点からC-BTEのリソース:基本原則シリーズ、リーダーシップシリーズ等の諸テキストが作成されています。基本原則シリーズからリーダーシップシリーズへと、それぞれ順序立てて学び、訓練されることで「信仰による神の救いのご計画」を実現していくように構成されています。挑戦し、実証してみて下さい。 

基本原則シリーズ、リーダーシップシリーズの基本的教育プロセス

1.  聖書を学ぶ (聖書箇所):研究主題に関する聖書箇所。文脈に沿って注意深く調べる。

2.  文献に当たる (神学書講読):論点を考える助けになる関係書籍、書物、記事、論文等を読み共に考える。

3.  論点を通して考える「対話・問答」 (ソクラテス問答):十分に共に議論する必要がある重要な論点が取り上げられている。

4.  聖書の原理・原則を適用する (個人の研究課題):実践的に研究課題を行うことで、成長が促される。更なる学びの土台が据えられる。 

基本原則シリーズ、リーダーシップシリーズの目標は生涯学習を通して知恵を深める土台を築き、この知恵によって、現代の多様な文化の問題、課題を取り扱うことができるようにすることです。

2020年6月18日木曜日

解説:基本理解11:「評価と認証」


「基本理解11: 評価と認証」

初代教会共同体の中で行われていた牧会と実務を行う上で人格的にも働きの面でも適格性を持ち、なおかつ今の文化の流れに即した指導者を見分け、認証していく取り組みである。

 

解説:指導者の認証について聖書の教えは的確です。主な箇所はパウロのテモテとテトスに宛てられた牧会書簡です。Ⅰテモテ31節『「人がもし監督の職につきたいと思うなら、それはすばらしい仕事を求めることである」ということばは真実です。ですから、監督はこういう人でなければなりません。』テトスでは「監督の職」を「長老」と言い換えています。

 テモテへの手紙第一、315項目、テトスへの手紙115項目、それらの項目を整理してみますと以下の三領域に集約されます。

Ⅰ、福音・信仰理解の成熟度(信仰の人):聖書の価値観、つまり永遠に価値あるものを理解し、それによって生きる。信仰によるものの考え方をしっかり身につけている。

① 自分を制し:信仰の人、希望の人、愛の人、つまり永遠に価値あるものを見定める能力を持ち合わせており、信仰と希望と愛を育てる

② 慎み深い:慎重で穏健な判断ができる

③ 金銭に無欲で:富の否定ではなく、永遠に価値あるもののために富を用いる

④ 善を愛する

⑤ 正しく

⑥ 敬虔である

⑦ 信者になったばかりの人であってはならない:成熟への道における時間的要素

Ⅱ、福音理解に基づく対人関係の成熟度:罪の本質、自己中心性を認識し、その罪の本質を克服する。普遍的価値観に基づく人間本能の抑制心、特に怒りの感情の抑制心こそ福音に生きる道である。

① 酒飲みでなく

② わがままでなく

③ 短気でなく

④ けんか好きでなく

⑤ 暴力をふるわず

⑥ 争わず

⑦ 温和で

⑧ 教える能力がある:教育技能以上に人格的要素の重視(Ⅱテモテ22425

Ⅲ、社会性の成熟度:未信者にも通用する礼儀正しさを持っている。

 ① 一人の妻の夫である

 ② 自分の家庭を良く治める

 ③ 品位ある:神の教えを飾る

 ④ よくもてなす:人と関わり、隣人愛

 ⑤ 教会外に人にも評判がよい 

注目すべきは教会の構成要素としての夫婦、家族の関係を重視していることです。そして聖書の価値観、つまり永遠に価値あるものを理解し、それによって生きる。信仰による「ものの考え方」をしっかり身につけていることです。さらに注目すべきはⅠテモテ 4:12「年が若いからといって、だれにも軽く見られないようにしなさい。かえって、ことばにも、態度にも、愛にも、信仰にも、純潔にも信者の模範になりなさい。」との勧めです。すなわち「信者の模範である監督職(教会の指導者)の条件」は 信仰者としての成熟した人であり、かつ成熟度の条件は信者、未信者両者の中で「評判の良い人」であることです。そして牧師は「信者の模範」であるということから、ここに上げられている条件はひとり監督のみならず、すべてのクリスチャンの目指す目標であり、成熟したキリスト者の特性と言えます。すなわち「神の家族」である教会共同体」を成り立たせる核心部分と言えます。

キリストの福音に基づく「良い行い」、あらゆる「良いわざ」が初代教会における宣教の拡大要因として見過ごせない重要な取り組みでした。つまり、福音による新しさに生きるキリスト者は「使徒たちの教え」、「健全な教え」によって、キリスト者としての生き方を確立していきました。個々のクリスチャンはもとより、クリスチャン家族、またその家族を建て上げる神の家族教会共同体が一体となって地域社会に存在感を示していきました。この一事のために使徒たち、教会の指導者たちは揺るがないリーダーシップを発揮しました。また、救われたクリスチャンたちが何をして宣教の拡がりを実現していったのかが見えてきます。つまり、福音に基づく「良いわざ」の実証によって、福音の確かさを証しする教会共同体の存在によって広まっていったということです。どのような時代、いかなる文化の中でも通じる聖書の原則、福音に基づく「良いわざ」、町、地域、国、ひいては地球村の繁栄に寄与・貢献する「良いわざ」です。しかも地域社会の一員としての市民意識をもって寄与・貢献していたのです。そのクリスチャンたちを注視する人々の問いかけに、的確にキリストの福音が語られました。そのようにして教会共同体は拡がっていったのです。

2020年6月12日金曜日

解説:基本理解10:「キリスト者教育Ⅱ:成人」


基本理解10: 「キリスト者教育Ⅱ:成人」

地区教会建て上げの中で行われる、成人したクリスチャンを信仰に建て上げ、信仰とその人自身のライフワークを完全に一致させて「際立って、顕著な、他とは異なる、普通とは違った」人生を全うできる者となるよう企画された本格的に秩序立てられた学びである。

 

解説:基本的には先に取り上げた「キリスト者教育Ⅰ:子供」の建て上げ教育構想と同じで、その延長線上に青年、成人教育とつづく生涯学習です。問題は統合的に生涯成熟へと学び続けるものであるということを真剣に受けとめられているかどうかです。それぞれ個別に与えられている賜物をいかに用いるかというライフワークに対する真剣な取り組みです。第一歩として「基本原則シリーズⅠ~Ⅲ」を習得し、自分自身の人生設計を描き、新たな一歩を踏み出してみることす。その上で次世代育成に知恵を尽くします。

生涯学習を考える上で、まず容易ならざる諸問題に直面している日本の現実を考えてみたいと思います。つまり、少子高齢化社会、人口減少、限界集落の現実、さらに労働環境の激変です。なぜ過疎社会が生じたのか、「過疎」つまり単に人口の移動だけでない「人口減少」です。少子高齢化社会の現実は先進諸国共通の現象でもあります。私たち同胞日本も人口減少による地方都市の消滅が取りざたされ、国力の衰退、国家存亡の危機として警鐘が鳴らされています。「都市消滅:限界集落」などと言われるその決定的原因は何か、人口減少です。なぜ人口減少なのか、人々のものの考え方、価値観が変わったがゆえです。とりわけ経済のグローバル化、さらに科学技術社会がもたらした構造的な問題、わけても労働、働き方の変革が上げられます。

産業革命以降100年そこそこの時代でありますが、就職したら定年まで働ける、その上、賃金や年金が確約された時代、その働き方が大きく変革しました。非正規雇用もそのひとつです。結果としてこれまでのパラダイムのままでは結婚しようともできない若者が増加し、さらに近代の生み出した個人主義、また、ポストモダンの多元主義は核家族化へと進み、結婚しない若者、結婚しても離婚が増え、家族崩壊が加速化し、結果として貧富の格差がさらに増大しつつある現実に直面しています。まさに聖書時代、古カトリック時代のような格差社会が再来しています。そして、今日の教会の多くは時代の変化に連動し、教会自身も高齢化が進み、次世代を見通せない状況に至っています。しかし、注目したいのは今日のような社会の中で、キリストと使徒たちの教えと手法を継承した原始キリスト教時代から古カトリック時代おける教会、神の家族共同体はむしろ広がっていったのです。その理由についての研究成果が今日、多く紹介されるようになっています。

 改めて啓示の書、聖書に焦点を当てる: それゆえに我々キリスト者は現実から啓示の書である聖書に注目し、神の意図から再考すべきです。結論から言えば、神の救いのご計画には現代の人口減少による都市消滅とは真逆の様子が見えてきます。とりわけ神の家族である教会は、現実に直面している少子高齢化の教会とは違い、豊かな次世代、三世代に渡る神の再創造の共同体として描かれています。しかし、欧米の伝統的キリスト教神学を踏襲する教会の多くが聖書の意図を明確に捉えることもなく、むしろ、この世、この時代のパラダイムの影響下に置かれ、この世のパラダイムに基づく神学教育がなされ、あえて極端な言い方をすれば説教中心の集まるだけの教会が建て上げられ、過疎地にあって「希望の教会」と言うより、この時代の同じパラダイムにあるだけに教会の多くが過疎状態そのものに陥っているということに気づくべきではないでしょうか。

教会主体のパラダイムの岐路となる新しい重要な問題点、それは「宣教の優先順位と個人の係わり方」、ライフワークとして多くの時間をそのために割くことはできるかどうかです。また信仰と教会の働きが、忠実な信者のこの世での日々の働きと遊離することなく取り組まれてるかどうかです。

一般社会における教育と仕事に関する考え方の変化:

時代の変革を捉えたいくつかの著書を紹介します。時間差はあるものの同じ経済構造を持つ日本も例外ではありません。今回の「新型コロナウイルス感染」の拡がりはよりいっそう変革に拍車をかけるに違いありません。

1、『仕事が変わる:職場で仕事をせずに成功する方法』ウイリアム・ブリッジ著(1994

ウイリアム・ブリッジは「脱仕事時代」に突入しつつあると言います。「脱仕事」その仕事、働き方の特徴は定時、定職、昇進、定給、昇給、恩典等々、工業化社会が始まる前にあった考え方に代わるものです。「脱仕事」以前は質とか人望という観点から仕事というものを見ていました。

第一次仕事変革 17801830

工業化社会前: 仕事をする

新しい仕事社会: 仕事を持つ

第二次仕事変革 1990年代

脱仕事体制から仕事のポートフォリオ

2、『仕事がなくなる:世界的な労働力の減少と脱マーケット時代の夜明け』ジェレミー・リフキン著(1995

ジェレミー・リフキンは伝統的な第一、二、三次産業:農業、製造、サービス、すべてにおいて科学技術改革が進み、受け皿を失った何百万という労働者が失業者リストに載るという状況が起こると指摘しています。

①オートメーション化された機械やロボット、益々精巧になるコンピューター 制御

②その結果、アメリカだけでも、何年か後には9千万以上の仕事についている124百万人以上の労働者が機械の導入で要らなくなる。

③共同して何かをする社会が失われる。

④会社の40パーセントに当たる仕事がなく なる。

⑤会社の労働力の75パーセントが削減される。

⑥今いる中間経営陣の80パーセントが職を失う。

⑦民間企業の働き口の内、25百万種がなくなってしまう。

⑧一つのサービス産業、市中銀行ないし貯蓄機関が再編されることで、その後の7年間に30から40パーセントの仕事が失われる。

3、『パラドックの時代―大転換の意識革命』チャールズ・ハンディ

今世紀末になると「家を拠点に仕事をする」人は労働人口の1/4に上るであろうという試算もある。「家を拠点」に働くというのと「家で働く」というのは違う。

4、『部族:新グローバル化経済での成功を左右する人種、宗教、帰属意識』ヨエル・コットキン 

きわめて説得力のある説明をしている衝撃的な本である。新しい経済の世界化が起きており、巨大な世界規模のネットワークが立て上げられている。 

こうした時代の変革の中でこそキリスト教信仰を持つ私たちはキリスト者としての信仰(信仰による神の救いのご計画)の学びに徹すべきであろう。私たちクリスチャンの信仰は、日々の働き方、すなわち神が私たちを召された「良いわざ」(エペソ210節:私たちは神の作品であって、良い行いをするためにキリスト・イエスにあって造られたのです。神は、私たちが良い行いに歩むように、その良い行いをもあらかじめ備えてくださったのです。テトス3章14節:私たち一同も、なくてならないもののために、正しい仕事に励むように教えられなければなりません。それは、実を結ばない者にならないためです。)との密接な関わりの中で、育まれていくべきです。

公民意識を持って地域に貢献する教会共同体: 聖書時代、そしてその後の古カトリック時代におけるクリスチャンたちは別次元の社会を作ろうとしていたのではありません。むしろ「良いわざ」つまり「公民意識」を持ち、さらなる「良いわざ」の具体的な課題として、確かな職業を身につけ、勤勉に額に汗して働き、自分たちの必要を自ら満たし、家族を建て上げ、さらに「良いわざ」、助けを必要としている方々への救援に取り組みました。またどのような立場であれ、上に立つ権威を敬い、公民としての生き方を確立していったのです。その延長線上に宣教の実を結びました(参照:Ⅰペテロ23章)。「むしろ、心の中でキリストを主としてあがめなさい。そして、あなたがたのうちにある希望について説明を求める人には、だれにでもいつでも弁明できる用意をしていなさい(Ⅰペテロ3:15)」。つまりキリスト者の福音に基づく「良いわざ」、その生き方を確立し、それに対する人々の問いかけに応答することで福音が語られ、福音を聞いた人々は、実証する神の家族である教会共同体、その共同体を構成する家族の存在に引き寄せられ、加わっていったのです。

2020年6月6日土曜日

解説:基本理解9: 「キリスト者教育Ⅰ:子供」


基本理解9: 「キリスト者教育Ⅰ:子供」

地区教会共同体の中で行われる、両親の指導の下、子供たちを信仰に建て上げ、それぞれに与えられているその子ならではのライフワークと生涯にわたる学びを始められるよう企画された、本格的に秩序立てられた学びである。

 

解説:このテーマは結婚する前に理解しておきたかった基本理解のひとつです。結論から言えば「神のかたち」として創造された人間の尊厳性、その個別性を認識し、その子が持って生まれたものをキリストにある救い、「神のかたち」としての再創造の御業についての教えを基盤として育て上げるように取り組むことです。決して親の押しつけ教育ではありません。

 

エペソ4:2324 「またあなたがたが心の霊において新しくされ、真理に基づく義と聖をもって神にかたどり造り出された(創世記127)、新しい人を身に着るべきことでした。」

コロサイ3:910  「あなたがたは、古い人をその行ないといっしょに脱ぎ捨てて、新しい人を着たのです。新しい人は、造り主のかたち(創世記127)に似せられてますます新しくされ、真の知識に至るのです。」 

各家族において、神の家族教会において取り組まれる「キリスト者教育」は「子供時代」の学びが次の「青年時代」の学びへ、さらに「成人」、そして「老年期」へと発展的につながる生涯教育の学びを実現することです。決して各年代毎に異なる、断片的な学びではありません。そう言う視点から考えると聖書の民、ユダヤ人伝統、タルムード:「父親からの格言」は実に興味深い事例です。 

タルムード:「父親からの格言」

5  読むことに備える年齢(聖書)

10歳 ミシュナーに備える年齢(律法)

13歳 戒律に備える年齢(バーミツバ-:成人 道徳的責任)

15歳 ゲマラに備える年齢(タルムード討論、抽象的論法・思考)

18歳 フーパに備える年齢(結婚)

20歳 生活力を備える年齢(職業)

30歳 十分な力を備える年齢

40歳 理解力を備える年齢

50歳 知恵を貸すことができるように備える年齢

60歳 年長者となる備えをする年齢(知恵においても、年齢においても)

70歳 白髪に備える年齢(知恵)

80歳 ゲブラに備える年齢(老人力)

90歳 寄る年波に屈するすべを備える年齢

100歳 死んでこの世界からいなくなってしまったかのような状態に備える年齢 

ここにあるように神の家族教会における①生涯教育、②幼子からの連続性の中での教育、③その子の人生に影響力の大きい教育が実現できたら、確かな実を結ぶに違いありません。

 「神のかたち」としての人間、その尊厳性を考えると、その子に備わったものを引き出す、発展させる学びを実践、実現することほど重要な取り組みはありません。もちろん聖書の規範としての倫理、道徳、価値観を前提に学び、訓練を実現していくものです。とりわけ幼子の時代は両親の役割は大きい。とにかく親子の安心感を最優先し、日常的対話を豊かにします。そして絵本の読み聞かせ、また神の創造された自然の中で体験的に学ぶ機会を作り、普遍的な真理を体験的に身につくように取り組むことです。

 時代は大きく変容しています。従来の教育では対応しきれない大きな変化です。そして時代の変革の狭間で「格差社会」が出現し、さらに顕著になっています。その要因は変革時代の到来、そして従来の教育に基づくひずみが生じているのです。これから求められる「教育」の新しいパラダイム:意志的に取り組んだ学習成果としてのレポート, 作品, テストなどの評価資料集である「ポートフォリオ」の重要性です。 

〈そのために求められるパラダイム転換〉

1、「型にはまった制度に基づく組織」から「型にはまらない自由な組織」へ

2、「非営利目的」から「益につながる学問」へ

3、「試験・学位制度」から「適正、ポートフォリオ」

4、「国家的視野」から「地域社会主導」へ

5、「制度上の権威」から「協力 - 親、企業」へ

6、「現場に備えるためを優先」から「現場で備えることを旨とする

7、「現場教育の軽視」から「現場教育との合体」へ          

8、「若者に対する教育」から「人生を建て上げていく教育」へ          

9、「学校中心のリソースセンター」から「地域社会主体のリソースセンター」へ 

2020年6月1日月曜日

解説:基本理解8: 「神学体系」

基本理解8: 「神学体系」

西洋の組織神学ではなく聖書神学に基づき、今までのものを払拭し「使徒の教え」と「文化の中で神学する」という手法に完全に再編する必要のある古くて新しい規範(1)福音を宣べ伝える者は何を学ぶべきか(2)どのような順序で学ぶべきか、の二つを問う。

 

解説:キリスト教に関わる学問は歴史や思想史、哲学、弁証学、聖書学、教義、倫理等々、多方面に及びます。ここで取り上げている「神学大系」は学びの優先順位から注目すべき課題です。つまり学びの優先順と言う視点から聖書全体の意図を明らかにする聖書神学の大切さを理解し、取り組みます。これまでも取り上げてきたようにすべてのクリスチャンが「聖書的に考えることを学ぶ」ことです。つまり聖書の基本原則を思考の基盤として、学びの中心であるいのちの交わりとしての教会共同体の中で指導者も信徒も共に対話・問答することです。そして摂理の内に置かれている「文化の中で神学する」ことによって使徒たちの教えの確立を確かなものとします。 

1、「教え」を読み学ぶ: 福音書、使徒の働き、書簡から「キリストと使徒たちの手法」を学び、使徒的信仰の枠組みを明確にします。理解を確かにするために奥義としての教会について開示された「パウロ書簡」から健全な教義の本質(ケリュグマ、ディダケー)を確認し、その概念を念頭に置き、四つの福音書を読むことで主イエス・キリストの意図が明確に理解できるようになります。つまり、福音に基づく「良いわざ」(善行)、弟子とされた生活の確立を聖書から枠組みを建て上げ、主の宣教大命令に応え得る基礎を築き上げます。具体的な取り組みとして聖書の基本原則の要約(キリスト教世界観)、その上で神学書講読、聖書の各区分、教え、著者たち、主要テーマ、問題等々をまとめていきます。基本原則シリーズ(Ⅰ~Ⅲ)はこうした考えに基づいて構成されています。 

2、問題と言外の意味をしっかり考える: 自分自身で、各家族で、教会で、そしてこの世の生活のなかで共に再考します。結果として体系的に文化的問題、社会的、政治的、経済的課題、および文化の問題の実態を提示し、信仰の弁明として基本的な文化とキリスト教の有り様を明らかにしています。信仰共同体を取り巻く文化への応答として、異なる世界観と諸宗教に対していかに関係し、親しみ、かつ自らの信仰を守るかを明らかにします。地域社会およびこの世での日常生活、家族、お金、仕事、様々な関係、さらに時間、伝道牧会活動、優先事項等々を明らかにします。 

3、考えたことを自分のものとする: 聖書の基本原則に基づく学びから、一歩踏み出し決断し、個人的な取り組み課題、また生活習慣等を確立していきます。その結果としてクリスチャンとしての生き方、その存在に対する人々の注視、そしてその人々からの問いかけが発せられることにより福音の証しの機会が与えられます。「問いかけ」に応答することで宣教の実を結び、こうして「主の宣教大命令」に応え、いのちの交わりとしての教会が広がっていくのす。大切なのは信じ救われたクリスチャンたちが建て上げられ、家族が建て上げられ、福音に基づく生き方を確立することです。 

このように自分たちが置かれた「文化の中で神学する」ことで「使徒たちの教え」を確立していきます。さらに宣教に対する「実践神学」を発展させます。つまり、聖書と文化の光の中で、現在の教職者を評価してみる、また、個人、家族のミニストリー戦略(広範な奉仕活動、仕事、地域への奉仕、教育、様々な才能、時間、お金の用い方等々)を描いてみる。また指導者たち、牧師・宣教師たちの戦略(世界中で必要な教会を支援すること、救援と開発、地域での様々な奉仕活動、牧会的配慮、気配り等々)を描きます。

まさに各教会共同体のなかで、かつ「学習者主体」の学びによって、聖書の基本原則から聖書全体を解し、主の宣教大命令に応え、実を結び「信仰による神の救いのご計画の実現」に至るのです。