2020年6月12日金曜日

解説:基本理解10:「キリスト者教育Ⅱ:成人」


基本理解10: 「キリスト者教育Ⅱ:成人」

地区教会建て上げの中で行われる、成人したクリスチャンを信仰に建て上げ、信仰とその人自身のライフワークを完全に一致させて「際立って、顕著な、他とは異なる、普通とは違った」人生を全うできる者となるよう企画された本格的に秩序立てられた学びである。

 

解説:基本的には先に取り上げた「キリスト者教育Ⅰ:子供」の建て上げ教育構想と同じで、その延長線上に青年、成人教育とつづく生涯学習です。問題は統合的に生涯成熟へと学び続けるものであるということを真剣に受けとめられているかどうかです。それぞれ個別に与えられている賜物をいかに用いるかというライフワークに対する真剣な取り組みです。第一歩として「基本原則シリーズⅠ~Ⅲ」を習得し、自分自身の人生設計を描き、新たな一歩を踏み出してみることす。その上で次世代育成に知恵を尽くします。

生涯学習を考える上で、まず容易ならざる諸問題に直面している日本の現実を考えてみたいと思います。つまり、少子高齢化社会、人口減少、限界集落の現実、さらに労働環境の激変です。なぜ過疎社会が生じたのか、「過疎」つまり単に人口の移動だけでない「人口減少」です。少子高齢化社会の現実は先進諸国共通の現象でもあります。私たち同胞日本も人口減少による地方都市の消滅が取りざたされ、国力の衰退、国家存亡の危機として警鐘が鳴らされています。「都市消滅:限界集落」などと言われるその決定的原因は何か、人口減少です。なぜ人口減少なのか、人々のものの考え方、価値観が変わったがゆえです。とりわけ経済のグローバル化、さらに科学技術社会がもたらした構造的な問題、わけても労働、働き方の変革が上げられます。

産業革命以降100年そこそこの時代でありますが、就職したら定年まで働ける、その上、賃金や年金が確約された時代、その働き方が大きく変革しました。非正規雇用もそのひとつです。結果としてこれまでのパラダイムのままでは結婚しようともできない若者が増加し、さらに近代の生み出した個人主義、また、ポストモダンの多元主義は核家族化へと進み、結婚しない若者、結婚しても離婚が増え、家族崩壊が加速化し、結果として貧富の格差がさらに増大しつつある現実に直面しています。まさに聖書時代、古カトリック時代のような格差社会が再来しています。そして、今日の教会の多くは時代の変化に連動し、教会自身も高齢化が進み、次世代を見通せない状況に至っています。しかし、注目したいのは今日のような社会の中で、キリストと使徒たちの教えと手法を継承した原始キリスト教時代から古カトリック時代おける教会、神の家族共同体はむしろ広がっていったのです。その理由についての研究成果が今日、多く紹介されるようになっています。

 改めて啓示の書、聖書に焦点を当てる: それゆえに我々キリスト者は現実から啓示の書である聖書に注目し、神の意図から再考すべきです。結論から言えば、神の救いのご計画には現代の人口減少による都市消滅とは真逆の様子が見えてきます。とりわけ神の家族である教会は、現実に直面している少子高齢化の教会とは違い、豊かな次世代、三世代に渡る神の再創造の共同体として描かれています。しかし、欧米の伝統的キリスト教神学を踏襲する教会の多くが聖書の意図を明確に捉えることもなく、むしろ、この世、この時代のパラダイムの影響下に置かれ、この世のパラダイムに基づく神学教育がなされ、あえて極端な言い方をすれば説教中心の集まるだけの教会が建て上げられ、過疎地にあって「希望の教会」と言うより、この時代の同じパラダイムにあるだけに教会の多くが過疎状態そのものに陥っているということに気づくべきではないでしょうか。

教会主体のパラダイムの岐路となる新しい重要な問題点、それは「宣教の優先順位と個人の係わり方」、ライフワークとして多くの時間をそのために割くことはできるかどうかです。また信仰と教会の働きが、忠実な信者のこの世での日々の働きと遊離することなく取り組まれてるかどうかです。

一般社会における教育と仕事に関する考え方の変化:

時代の変革を捉えたいくつかの著書を紹介します。時間差はあるものの同じ経済構造を持つ日本も例外ではありません。今回の「新型コロナウイルス感染」の拡がりはよりいっそう変革に拍車をかけるに違いありません。

1、『仕事が変わる:職場で仕事をせずに成功する方法』ウイリアム・ブリッジ著(1994

ウイリアム・ブリッジは「脱仕事時代」に突入しつつあると言います。「脱仕事」その仕事、働き方の特徴は定時、定職、昇進、定給、昇給、恩典等々、工業化社会が始まる前にあった考え方に代わるものです。「脱仕事」以前は質とか人望という観点から仕事というものを見ていました。

第一次仕事変革 17801830

工業化社会前: 仕事をする

新しい仕事社会: 仕事を持つ

第二次仕事変革 1990年代

脱仕事体制から仕事のポートフォリオ

2、『仕事がなくなる:世界的な労働力の減少と脱マーケット時代の夜明け』ジェレミー・リフキン著(1995

ジェレミー・リフキンは伝統的な第一、二、三次産業:農業、製造、サービス、すべてにおいて科学技術改革が進み、受け皿を失った何百万という労働者が失業者リストに載るという状況が起こると指摘しています。

①オートメーション化された機械やロボット、益々精巧になるコンピューター 制御

②その結果、アメリカだけでも、何年か後には9千万以上の仕事についている124百万人以上の労働者が機械の導入で要らなくなる。

③共同して何かをする社会が失われる。

④会社の40パーセントに当たる仕事がなく なる。

⑤会社の労働力の75パーセントが削減される。

⑥今いる中間経営陣の80パーセントが職を失う。

⑦民間企業の働き口の内、25百万種がなくなってしまう。

⑧一つのサービス産業、市中銀行ないし貯蓄機関が再編されることで、その後の7年間に30から40パーセントの仕事が失われる。

3、『パラドックの時代―大転換の意識革命』チャールズ・ハンディ

今世紀末になると「家を拠点に仕事をする」人は労働人口の1/4に上るであろうという試算もある。「家を拠点」に働くというのと「家で働く」というのは違う。

4、『部族:新グローバル化経済での成功を左右する人種、宗教、帰属意識』ヨエル・コットキン 

きわめて説得力のある説明をしている衝撃的な本である。新しい経済の世界化が起きており、巨大な世界規模のネットワークが立て上げられている。 

こうした時代の変革の中でこそキリスト教信仰を持つ私たちはキリスト者としての信仰(信仰による神の救いのご計画)の学びに徹すべきであろう。私たちクリスチャンの信仰は、日々の働き方、すなわち神が私たちを召された「良いわざ」(エペソ210節:私たちは神の作品であって、良い行いをするためにキリスト・イエスにあって造られたのです。神は、私たちが良い行いに歩むように、その良い行いをもあらかじめ備えてくださったのです。テトス3章14節:私たち一同も、なくてならないもののために、正しい仕事に励むように教えられなければなりません。それは、実を結ばない者にならないためです。)との密接な関わりの中で、育まれていくべきです。

公民意識を持って地域に貢献する教会共同体: 聖書時代、そしてその後の古カトリック時代におけるクリスチャンたちは別次元の社会を作ろうとしていたのではありません。むしろ「良いわざ」つまり「公民意識」を持ち、さらなる「良いわざ」の具体的な課題として、確かな職業を身につけ、勤勉に額に汗して働き、自分たちの必要を自ら満たし、家族を建て上げ、さらに「良いわざ」、助けを必要としている方々への救援に取り組みました。またどのような立場であれ、上に立つ権威を敬い、公民としての生き方を確立していったのです。その延長線上に宣教の実を結びました(参照:Ⅰペテロ23章)。「むしろ、心の中でキリストを主としてあがめなさい。そして、あなたがたのうちにある希望について説明を求める人には、だれにでもいつでも弁明できる用意をしていなさい(Ⅰペテロ3:15)」。つまりキリスト者の福音に基づく「良いわざ」、その生き方を確立し、それに対する人々の問いかけに応答することで福音が語られ、福音を聞いた人々は、実証する神の家族である教会共同体、その共同体を構成する家族の存在に引き寄せられ、加わっていったのです。

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