先回、「ソクラテス問答」についての進め方について一つの資料を紹介しました。さらに確かな問答を展開するためにもう一つの資料を紹介します。実際に問答を導く体験をされた後に読んでいただき、検証し、そして再挑戦していただければと思います。「問答」は文字通り「学習者主体」で進められますので、理屈以上に実際の取り組みを積み重ねながら習得していくものです。
教育の目的とは何か、
• 学び方を学ぶことである。
• あらゆる知識と知識を統合する。
• リーダーは、参加者が自分の今までの経験や思考過程を通して、自分なりの解答を見つけるよう促す必要がある。
• 問答は真理や真意を知ろうと、声に出して思いめぐらす手法である。
1、基本事項(基本原則)を挙げる。(基本概念を深める)
2、物事の表面下にあるものを探求する。
3、思考の問題領域を追及する。
4、各自が自分の思考構造を理解できるようにする。
5、参加者がより明確で、正確かつ主題から離れないような発言に気をつけることができるようにする。
6、参加者一人一人が自分なりの論理で納得できるようにする。
7、参加者が思考の要素である主張、証拠、結論、争点となっている問題、前提、言外の意味、結果として当然言えること、概念、解釈、観点に気付けるようにする。
リーダーの役割: 考えるクリスチャンを建て上げる
• 明確な認識:批評的な物の考え方を育てる。
そのために聞いて鵜呑(うの)みにせず、なぜ、そう考えられるのか、客観的に示す。
そのために聞いて鵜呑(うの)みにせず、なぜ、そう考えられるのか、客観的に示す。
• そのために、クラスの環境が、真摯な態度、心を開いた語り方、理解しようとする聞き方、自律・自主の精神、論理性、自己判断ができやすい場とする。
• また、それがさらに一人一人の発言を促すことにつながることが感じられるようにする。
そうして初めて、参加者は問題を特定し、解決する自己能力を信じられるようになる。またそこから、自分で考えることが大事である、との思いを抱くようになり、また、自分で考えることは悪いことでも、間違ったことではないと思えるようになる。
権限を与えられている人(リーダー)は「正しい」答えを与える人ではなく、正しい答えを見つけ出す手助けをしてくれる人であり、自分たちの内に理解する力が与えられているということを発見できるようにさせることである。すなわち、「ソクラテス問答」におけるリーダーは説教する人ではなく、問いを投げかける人である。(それだけにリーダー自身、よく学び、理解を深め、学びの方向性を明確に持っていることが前提になる)
リーダーの備え: リーダーは以下のような質問をするには、どうすれば良いかを学び備える。
•
意図を探る
•
理由や証拠を挙げる
•
問答が混乱に陥らない(論点を明確に)
•
言わんとするところを理解しようとして聞く気持ちにさせる
•
実のある比較対象を導く
•
矛盾や不一致を明確にする
•
言外の意味や当然の帰結を引き出すような質問をする
考えるクリスチャンを建て上げるために:
•
前もって分かりやすくお膳立てされた解答を与えることはしない。
•
独善的な単なる意見を信じるようなことはさせず、大局的視点で考える。
•
無理に質問者が「そうだ」と思えないような結論を押し付けたり、そのように問答を誘導したりしない。
1、大きな問題や課題をいくつかの部分に分け、扱いやすくする。
2、学習者自身にとって意味のある状況を作り出すことで学ぶ意義を見出せるようにする。
3、言い換えたり、質問し直したりすることで、学習者が自分の考えを明確にできるようにする。
4、考えさせる質問を投げかける。
5、問答が脇道にそれないようにする。
6、学習者同士が互いに説明し合うような働き掛けをする。
7、アドバイスをしたり、情報の用い方を示したりして、学習者自身が知らなければならない事は何かに気付けるようにする。
8、決して発言を中断させたり、無視したり、不当に却下したりせず、互いが互いの見解にきちんと向き合うよう対応する。
「ソクラテス問答」の三つの型
1、自然発生的・計画的でない問答
2、予備的問答
3、焦点を絞った問答
1、自然発生的・計画的でない問答
質問による探求→ 予期しない展開になる、疑問を質問に変える
1、自然発生的・計画的でない問答
質問による探求→ 予期しない展開になる、疑問を質問に変える
全く関係のないことを言ったとき、
「新しい問題が提起されましたね」
「なぜ、そう考えるか」
「新しい問題が提起されましたね」
「なぜ、そう考えるか」
「今の論点との関係は」
ものによっては「後で取り上げましょう」
ものによっては「後で取り上げましょう」
質問による探求→ 予期しない展開になる、曖昧、あるいは一般的な言葉で応答した場合、
何人かの参加者に同じ質問に答えてもらう。
それぞれの理解の仕方を比べて見たり、違った角度からの質問をしたり、その比較を参加者自身にさせる。
何人かの参加者に同じ質問に答えてもらう。
それぞれの理解の仕方を比べて見たり、違った角度からの質問をしたり、その比較を参加者自身にさせる。
2、予備的問答
リーダーが、参加者が何を知っているのか、どう考えているのかを知りたい時、色々な事を考えてもらいたい時に用いる。
また後で問答をする時、役立つような質問、ある分野をどう考えているのか、問題領域や気付いていない偏見を明確にし、その人の興味や矛盾点を知るために用いる。
リーダーが、参加者が何を知っているのか、どう考えているのかを知りたい時、色々な事を考えてもらいたい時に用いる。
また後で問答をする時、役立つような質問、ある分野をどう考えているのか、問題領域や気付いていない偏見を明確にし、その人の興味や矛盾点を知るために用いる。
3、焦点を絞った問答
ソクラテス問答の主要な型: 論点や概念を実際に深める。
参加者に自らの見解や全体像を明確にし、類別、分析、評価し、知っている事と、知らない事を判別し、関連のある事実と知識を統合してもらうことで、問答がより深く広がり、また焦点が絞られていく。
幅広く秩序だった統合された問答をすることで、参加者が色々な考え方や洞察を発見し、それを発展させ、他の人たちと分かち合う体験をしてもらう。
幅広く秩序だった統合された問答をすることで、参加者が色々な考え方や洞察を発見し、それを発展させ、他の人たちと分かち合う体験をしてもらう。
前もって計画し、この問題をどう捉えているだろうか、そう考える根拠は何だろうか、どこから問題となる考え方が起こるのか、この問題に関して他にどのような事を考えるだろうか、どのような結論に達する可能性があるだろうか等々を考えておく。
リーダーはいつ、どの型の質問をすれば「知性の炎を燃え上がらせる問答」となるかに精通し、感性を磨いておくよう訓練している必要がある。
〈ソクラテス問答の分類法〉:
人間の考え方には普遍的特質がある
1、明確にするための質問
人間の考え方には普遍的特質がある
1、明確にするための質問
2、思い込み、前提がないかを探る質問
3、論拠・証拠・要因等を引き出す質問
4、見方・視点に関する質問
5、引き出せる推測、推論・当然の帰結を探る質問
6、論点(質問・疑問・問題)についての質問
1、明確にするための質問
・それはどのような意味ですか、
・あなたの言っていることと、今話し合っていることとの関連は、つまり、それを別の言葉で言い換えるとどうなりますか、
・ここで一番問題となっていることは何だと思いますか、
・例えばどのようなことですか
・あなたが一番問題にしたいことは…ですか、
・それは例えばということですか
・もう少し説明してもらえますか
・なぜそういうのですか
・つまり、あなたの言いたいことは「… 」ですか
2、思い込み、前提がないかを探る質問
・あなたはどう思いますか、
・あなたならどう考えますか、
・あなたは… …と考えているように思えますが、
・あなたの論拠は全て…
… から来ているように思えますが、
・あなたは… …
考えているようですね、なぜそう取るのが当然だと思うのですか、
3、論拠・証拠・要因等を引き出す質問
・例えばどのようなものが挙げられますか。
・あなたがなぜそう言えるのか教えてください。
・それは信じるに足るだけの十分な証拠と言えますか。
・あなたがその結論に達した理由は何ですか。
・それが正しいかどうかどうすれば分かりますか。
4、見方・視点に関する質問
・あなたは --- の視点からこの問題を捉えようとしていますが、なぜ
--- ではなくて--- なのですか。
・他の考え方を持つ人たちはどう答えるでしょう。なぜ違った答えをするのでしょうか。どこからその違いが出てくるのでしょうか。
・この問題を違った角度から見ている人、違った角度からも見られると考える人はいますか。
5、引き出せる推測、推論・当然の帰結を探る質問
・つまりあなたの言いたいことは
--- ですか、
・--- と言われますが、つまり --- ということですか、
・もしそうなったとしたら、そのことの故に他にもどのような事が起こるはずだと思いますか。なぜですか、
・それはどのような影響を与えると思いますか。
・それは必ず起こることですか、それとも起こる可能性があることですか、
6、論点(質問・疑問・問題)についての質問
・どうしたらこの問題を解くことができると思いますか、
・誰かこの問題を解決できる人はいませんか、
・論点は明確ですか。皆さん論点が何であるか理解できますか、
・この問題を考えるとき推測されることは何ですか、
・この問題はなぜ重要なのですか、
ソクラテス問答: 思考の四つの方向論理
•
「人には、考えを引き出してくる方向が4つある」
•
①どう考えるかは、その人の人生であり、②どのような根拠で、③どのような証拠をあげて、④どのように推論するかによって決まる。
•
どう考えるかで、私たちの進む方向が決まる。
•
どう考えるかは、この4方向を色々使いながらなされる。
•
与えられた主題に対し、なぜそのように考えるのかを内省する機会を与える。
•
自分の考えを立証しているか、あるいは立証できるかよく考える機会を与える。
•
そう考えることでどのような推論をし、結論を引き出しているかを熟考する機会を与える。
•
自分と考えの違う人が筋の通った反論を展開した場合、あるいは考慮すべき別の可能性を提起した場合どうするかを考えさせる。
•
さらに「論点の明確化」と「論点を質問する」
不思議に思う! 自分で不思議に思うことを不思議に思う。
•
参加者全員の思考が開花するようにリーダー自身が色々不思議に思う必要がある。
※色々質問を試す
※参加者の生活に密着した質問
※あきらめない。
参加者が答えられないとき、
①質問の言い換え、
②質問の小分けにし、
③単純な質問をする。
※色々質問を試す
※参加者の生活に密着した質問
※あきらめない。
参加者が答えられないとき、
①質問の言い換え、
②質問の小分けにし、
③単純な質問をする。
参加者の習熟度に添う必要がある(学習者主体)
①
参加者に合わせた質問を準備する。
②
すぐに参加者とソクラテス問答を十分にできるなどと考える必要もない。
この方法を使えば、小学生であっても、特に高等教育を受けていない人とであっても、誰とでも理解を深める問答をすることができる。
Socratic Questioning and Role:Richard W.Paul,Ph.D.
Director the Center for Critical
Thinking and Moral Critique
Sonoma State
University
Chair, National of
excellence in Critical Thinking
Published by Foundation
for Critical Thinking, Santa Rosa,CA
0 件のコメント:
コメントを投稿